散歩の途中、「ムカゴ持っていかんかん」と声をかけられ、「ありがとう。嬉しい」と袋にいっぱいのムカゴをいただいてきた。早速、まずはムカゴご飯を作ろう。
研いだお米にムカゴを混ぜ、塩、酒少々に、昆布を入れていつも通りにご飯を炊くと、美味しいムカゴご飯の出来上がり。孫二人が「美味しい、美味しい」と、言いながら食べてくれ、私の心は幸せ感に満たされる。遅れて帰宅したパパには、ムカゴのバター煎りをビールのつまみに出すと「美味しいですね」とやはりお褒めの言葉をもらった。
作手祭りの日に手に入れられなかったへぼをご近所さんに「欲しいんだけど」と言うと、すぐに届けてもらえた。へぼの巣から丁寧に取り出し、しょうゆと味醂、砂糖もすこし加えて煮つける。これもまた家族に大好評で、楽しい夕食時間となった。
たまたま、亡くなった夫の友人が、二日続けてお参りに訪ねてくれるという偶然がかさなり、初めての方には勇気がいるかと思いながら出してみたが、二人とも「美味しい」としっかり食べてもらえた。珍しい郷土食ともいえるへぼ飯、ムカゴご飯を食べてもらいながら、「やっぱり彼は作手特産だったよな」などと亡くなった人を偲ぶ嬉しい会話ができた。
思えばこうした美味しい食材が、昔はもっと沢山あった。大昔、嫁いできたばかリのころに、義父が釣ってきたアユをお味噌汁にしたのにはびっくりしたものだ。こうたけという名のキノコも美味しかった。五平餅ももちろんお客さんが来れば必ず義父が大きな手で作ってくれた。
懐かしがっても仕方がないが、今よりももっともっと豊かな食生活をしていたと思う。